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相続した空き家を放置した場合のリスクは?早めの対策でトラブルを避ける方法も紹介

実家相続

遠方の実家を相続し、長期間空き家になっているものの「何から始めてよいかわからない」と悩んでいませんか?空き家の放置には、税金の負担増や近隣への迷惑、法的なリスクなど、思わぬトラブルが潜んでいます。本記事では、相続した空き家をそのままにすることで発生するリスクや、最初に取り組むべき手続きと対策、役立つ相談先まで、わかりやすく解説します。今すぐ行動するヒントを手に入れてください。

空き家を放置することによる主なリスクと法律的な背景

遠方の実家が長らく空き家状態となっている場合、まず考えていただきたいのが以下のような重大なリスクです。

リスク項目内容影響
固定資産税の負担増 「住宅用地の特例」が解除されると、土地部分の課税が最大6倍になる可能性があります 税負担が大幅増加し、維持費が重くなる
近隣への迷惑・損害賠償 老朽化により倒壊、火災、不法侵入、害虫発生などのリスクが高まり、近隣に被害が及ぶ可能性があります 損害賠償やトラブル対応など、追加負担のリスク
相続登記の未履行による罰則 令和6年4月より、不動産を取得後3年以内の相続登記が義務化され、未申請の場合は最大10万円以下の過料が課されます 法的・金銭的リスクの発生

まず、住宅敷地にかかる「住宅用地の特例」は、建物が存在して適切に管理されている場合は軽減措置が適用され、土地部分の固定資産税が最大で6分の1に抑えられます。しかし、建物の老朽化や雑草の繁茂、不法侵入などにより「管理不全空き家」または「特定空き家」として自治体に指定されると、この特例は解除され、税額が実質的に最大6倍に跳ね上がります。

また、空き家の老朽化が進むと、倒壊や火災、害虫・不法侵入などを引き起こしやすくなり、近隣住民に対して損害を与える可能性が高まります。この場合、所有者として損害賠償責任が問われることがあります。

さらに、令和6年4月1日からは相続した不動産について、相続登記が義務化されました。相続や遺贈により不動産を取得した日から3年以内(施行前の相続は令和9年3月31日まで)に登記を申請しなければならず、正当な理由なく未履行の場合は過料(最大10万円)が科されます。

ご実家が遠方で管理・法的手続きが滞りがちな状況では、これらのリスクが重なる可能性がありますため、放置せずに早めの対応が重要です。

まず着手すべき初期対応――現状整理と法的手続き

遠方の実家を相続して空き家となり、何から始めればよいか悩んでいる方は、まずは次の3つの対応を着実に進めることが重要です。

対応項目目的具体的内容
相続登記の実施と期限確認所有者不明を防ぎ、法的トラブル回避相続を知った日から原則3年以内に登記。義務化により過料の可能性もあるため、早めに対応
建物の現状把握と定期点検老朽化や劣化リスクの把握と近隣トラブル防止専門家によるインスペクションや耐震診断を実施し、劣化箇所・倒壊リスクを把握
相続放棄・限定承認・単純承認の検討将来的な負担や税務への対応を見据えた選択負債が大きい場合には相続放棄や限定承認の検討も視野に入れる

まず、「相続登記」の実施が最優先です。2024年(令和6年)4月から、相続登記は不動産を取得したことを知った日から3年以内に行う義務が課せられ、正当な理由なく怠ると最大10万円の過料が科される可能性があります。また、すぐに遺産分割協議ができない場合は、「相続人申告登記」を活用して義務部分を履行する選択肢もあります。

次に、建物の「現状把握と定期点検」です。相続後に空き家化した建物は、給排水設備や屋根・外壁の劣化、シロアリ被害などによる倒壊リスクが高くなるため、専門家によるインスペクションや耐震診断を行い、現在の状態を把握することが大切です。また、法令(建築基準法や都市計画法等)の適合性も併せて確認することが有効です。

さらに、相続に伴う責任や今後の負担を踏まえ、「相続放棄」「限定承認」「単純承認」の中から適切な選択を検討するフェーズにも入ります。相続人に借入や管理負担が重い場合には、相続放棄や限定承認を選ぶことで、不動産に関連するトラブルや想定外の支出を回避することができます。

以上のように、まずは相続登記の実施・建物の現状把握・相続の方法選択という3つの「初期対応」を丁寧に進めることで、空き家に起因するリスクを早期にコントロールでき、今後の対策を安心して検討できる状態に近づけます。

具体的な対策方法の選択肢と基準

相続で取得した遠方の空き家について、有効な対策を検討する際には、「売却」「賃貸活用・セカンドハウス化」「解体・更地化・国庫帰属制度」など、状況に応じた選択肢があります。それぞれのメリットや留意点を整理し、適切な判断につなげていただけます。

対策方法 メリット 注意点・基準
売却(3000万円特別控除の活用) 譲渡所得から最大3,000万円控除で節税可能 昭和56年5月31日以前の旧耐震基準、相続後3年以内の年末まで、売却価格1億円以下、第三者への売却、耐震補強または解体の実施などが必要です
賃貸活用/セカンドハウス化 継続収入の確保や将来利用の柔軟性 初期の修繕費・リフォーム費用や賃料設定、税務対応・固定資産税など管理コストが発生します。建物状態に応じた維持管理が不可欠です(要件は検索より一般的知見による整理)
解体・更地化・国庫帰属制度 固定資産税軽減、周辺への安全配慮 解体費用の負担が大きい点と、相続土地国庫帰属制度の利用には年度や申請条件の確認が必要です(制度利用には自治体や法務局等への細かい相談が必要です)

まず「売却」の場合、相続空き家の3,000万円特別控除は譲渡所得の大幅軽減に効果があり、昭和56年5月31日以前の建物であれば適用可能性があります。売却期限は相続開始から3年後の年末まで、さらに売却価格が1億円以下であること、第三者への譲渡、耐震補強もしくは解体が要件とされています。

また2024年(令和6年)以降は、売主だけでなく買主が耐震改修や解体を行うケースでも、譲渡の翌年2月15日までの工事完了で適用可能になるなど、制度は利用しやすくなっています。

賃貸活用やセカンドハウス化については、管理費や初期リフォーム費用、賃料設定や税務対応を含めた収支の見通しが大切です。建物の老朽化状況によっては、かえってコストがかさむ可能性もあるので、専門家による現地調査と収支計画の検討が望ましいです。

解体・更地化も選択肢の一つです。固定資産税の負担を軽減し、倒壊リスクを減らすなど安全面でのメリットがあります。一方で、高額な解体費用が必要となるため、相続土地国庫帰属制度の活用など行政制度を併用できないか検討することをおすすめします。これらの選択肢は、自治体窓口や法務局などで事前相談することが重要です。

いずれの選択肢においても、まずは建物の耐震性や劣化状況、固定資産税の負担状況を整理したうえで、専門家(税理士・司法書士・建築士)へご相談いただくのが安全です。当社では初期相談も承っておりますので、お気軽にご連絡ください。

助けを得るための相談先と外部資源の活用

相続で取得した空き家の扱いに悩まれている場合、まずは信頼できる相談先や支援制度を確認することが重要です。以下のような外部資源を活用して、安心して対策を進められます。

相談先・支援内容活用ポイント
自治体の空き家相談窓口(空き家バンク等)各市町村が設置する相談窓口や空き家バンクを通じ、現地確認や登録支援、売却・利活用の一手が提供されます。まずはお住まいの自治体窓口へ相談し、地元の制度や事例を確認します。
専門家(司法書士・税理士・不動産の専門家)相続登記、税務相談、空き家の処理方法・資産評価、手続きのアドバイスを得られます。初期段階で複数の専門家に相談し、方針の優先順位や必要手続きを整理します。
行政の補助金・助成制度空き家の解体や改修に対して、自治体によっては費用の一部(20%〜50%程度)の補助が受けられます。上限は数十万〜100万円の例もあります。居住地の自治体のウェブサイトや窓口で制度の有無・条件を確認し、必要な申請手続きを前倒しで準備します。

例えば、国土交通省の空き家再生等推進事業を通じ、多くの自治体で解体や改修に対する補助制度が整備されており、費用の1/5〜1/2補助、上限は50万〜100万円程度とされているケースがあります。また、自治体によっては特定空き家認定される前に相談することで、迅速かつ丁寧な支援が受けられる体制があります。

司法書士や税理士、不動産の専門家は、相続登記の期限管理や贈与・売却・解体など判断すべき選択肢を整理できる重要な相談相手です。相続登記義務に伴う過料リスク(令和6年4月施行)を回避するためにも、早めに相談し、専門家からのサポートを受けて対策を進めてください。

まとめ

相続した空き家を放置すると、固定資産税の増加や近隣への損害賠償リスク、法的な過料まで多くの問題が発生します。早期に現状を把握し、相続登記や管理方法を検討することが重要です。売却や活用、解体など状況に応じた対策があり、自治体や専門家への相談や支援制度も有効に活用できます。遠方でも一歩ずつ対応を進めることで、リスクの軽減と安心に繋がります。

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執筆者紹介

小川 浩司

代表取締役

キャリア30年

保有資格

行政書士

宅地建物取引士

賃貸不動産経営管理士公認 不動産コンサルティングマスター、他

相続対策、空き家対策、不動産終活についてのコンサルティングを得意としております。
行政書士として登録しており、権利義務や事実証明に関する書類の作成、相続手続きなどの専門性を必要とする案件にも対応しております。
ご相談の内容により、 弁護士、税理士、司法書士、土地家屋調査士、建築士等の他の専門家と連携し、お手伝いさせていただきます。いつでもお気軽にご相談いただけますと幸いです。
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