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固定資産税の負担が未利用地で増す理由は?有効な対策や売却賃貸のポイントも解説

両親が亡くなった後、遠方にある未利用地が残り、毎年数万円の固定資産税を負担し続けていませんか?使い道が決まらず「売却するべきか、それとも賃貸に出すべきか」と迷われている方も多いはずです。本記事では、未利用地にかかる固定資産税の負担が長期化する仕組みや税負担を抑える方法、そして悩ましい選択肢の判断軸について、わかりやすく解説します。悩みを一歩ずつ解消していただける内容ですので、ぜひご一読ください。

未利用地をそのままにしておく固定資産税の負担とは

遠方にある未利用地が「負の資産」となる主な理由は、固定資産税評価額に基づく年間課税が、利用されず更地として放置されていることで過大になることにあります。まず、固定資産税は「固定資産税評価額×標準税率1.4%」で算出されます。住宅用地の特例が適用されない未利用地では、この計算式がそのまま適用され、税負担が重くなります。

具体的には、住宅用地の特例が適用される土地では、200平方メートルまでの部分は課税標準額が評価額の1/6に、更に200平方メートルを超える部分は1/3に軽減されます。しかし未利用地として更地の場合、この特例は適用されず、軽減措置を受けられません。その結果、同じ評価額でも年間税額が最大で6倍になるケースも生じ得ます。これは、未利用地が税負担だけが発生する「負の資産」となり得る要因です。

また、例えば評価額3,000万円であれば、住宅用地特例適用時には年間固定資産税が約7万円で済むところ、更地では一律で約42万円になることもあり、数十万円の差が出ます。さらに、未利用地が遠方にある場合、管理や活用の手間がかかるうえ、長期保有によってその累積負担は数百万円にも達する可能性があります。

項目住宅用地(特例適用)更地(未利用地)
課税標準額評価額の1/6(~200㎡)/1/3(超過分)評価額そのまま
固定資産税率1.4%1.4%
年間税額の差(例:評価額3,000万円)約7万円約42万円

このように、未利用地が固定資産税というコストを生み出し続けてしまうことから、「放置された土地=負担資産」として認識されるわけです。

固定資産税を抑えるための基本的な手立てとは

遠方に残された未利用地について、固定資産税の負担を少しでも軽減するための基本的な方法をわかりやすく整理いたします。

まず、住宅用地の軽減措置(特例)の有無が税額に大きく影響します。住宅用地(建物が存在する土地)では、小規模住宅用地(200㎡以下)について固定資産税の課税標準が1/6、都市計画税が1/3に、それ以上の部分はそれぞれ1/3、2/3に軽減されます。一方、建物がなく更地となると特例が適用されず、固定資産税評価額の約70%を課税標準とする通常課税に戻り、結果として税額は実質3〜4倍に増えるケースが一般的です。

状況 固定資産税 標準的課税 備考
住宅用地(小規模住宅用地) 評価額×1/6×1.4% 住宅が建っている要件あり
住宅用地(200㎡超の部分) 評価額×1/3×1.4% 住宅がある限り適用
更地または特定空き家指定後 評価額×70%×1.4% 特例適用外で3〜4倍に増加

次に、空き家を放置して「特定空き家」に指定されるリスクがあります。特定空き家とは、倒壊の恐れ、衛生上の問題、景観の損なわれ、生活環境の保全に不適切などの理由で市町村が指定するもので、指定されると住宅用地の特例が外れ、税負担が大幅に増加します。

さらに、解体後に更地化すると、翌年1月1日時点で建物がないため特例対象とならず税負担が増える点にも要注意です。解体のタイミングと税額増の関係をよく確認し、必要に応じて解体費用とのバランスを検討することが重要です。

売却か賃貸か—選択の判断軸と税負担との関係

遠方の未利用地を前にして「売却すべきか賃貸すべきか」、迷われるお気持ちは非常によくわかります。まず、売却と賃貸それぞれの税負担や優位性について、事実に基づいた内容で整理いたします。

以下に「売却」「賃貸(貸付)」の比較表を示します。

選択肢税負担・節税要素管理・実行の手間
売却 • 低未利用土地等として、都市計画区域内で譲渡価格が500万円以下(市街化区域等では800万円以下)なら、譲渡所得から最大全額100万円が控除されます。 • 相続空き家の敷地を含む場合、居住用財産として譲渡すれば、譲渡所得から最高3,000万円までの特別控除も利用可能です(相続人が3人以上の場合は2,000万円)。 売却手続き完了後は管理不要で運用リスクが消滅します。
賃貸 • 未利用地を貸付(賃貸借)に転換すれば、借地権や借家権が付くことで、相続税評価額が下がり、固定資産税評価額も概ね低下する可能性があります。 • 所有し続ける限り固定資産税はかかりますが、土地の形や用途によっては評価軽減が得られる場合があります。 賃借人の募集や契約管理、定期的な確認などの手間が発生します。

このように、税負担の面から見ると、売却は特例の適用によって「一時的な税負担の軽減」が期待でき、賃貸は「税評価の継続的な減額による節税」が見込まれます。

さらに、これらの選択をする際には以下のポイントを参考に判断なさると良いでしょう。

  • 収益性:売却はまとまった資金化が可能ですが、賃貸は定期的な収入が得られるものの、賃料水準は土地の立地・利用状況次第です。
  • 管理負担:売却は手続き完了後、管理不要となりますが、賃貸では契約管理・維持管理といった継続的対応が必要になります。
  • 税負担の性質:売却による税負担は譲渡時に発生しますが、特例により軽減可能です。一方、賃貸は固定資産税などの保有コストが継続しますが、評価額低減による長期的な節税が期待できます。

総じて言えば、「すぐに手放して管理負担から解放されたい」「まとまった資金が必要」という場合は売却が有力な選択肢です。「将来的に土地から収益を得たい」「評価軽減によって毎年の税負担を下げたい」という場合は賃貸への転用が検討に値します。

ご自身の目的やご事情に応じて、上記の観点を基に判断を進められるとよろしいかと思います。

遠方の未利用地を活かす、具体的なアクションプランのヒント

遠方の未利用地を所有しておられる場合、固定資産税や都市計画税などの負担を軽減しながら、管理や活用を進めるためには、以下のような実践的なステップを踏まえることが有効です。

まず、土地を所有しているだけで毎年固定資産税(課税標準額×1.4%)および、市街化区域の場合は都市計画税(課税標準額×0.3%)の支払い義務が発生しますので、この支出を最低限に抑えることを考える必要があります 。そこで、未利用地のまま放置せず、暫定的にでも利用を開始する「暫定活用」(駐車場やコンテナ設置など)や、定期借地として貸し出す方法などを検討すると良いでしょう 。

加えて、税制面でのメリットや自身の状況に合わせてアクションを選びやすくするために、以下の相談窓口を活用することをおすすめします。

相談先活用内容期待できる効果
市町村の固定資産税課課税額や活用による軽減措置の確認納税負担の見通しが立ちやすくなる
税理士譲渡や賃貸に伴う税務面の検討・申告支援譲渡所得控除や税額の最適化が可能
土地家屋調査士・司法書士用途変更や契約(借地設定など)の手続相談法的に適切で安心な活用を実現

最後に、ご自身の目的や状況に応じて、「売却」「賃貸」「暫定活用」などの中から次のアクションを選びやすくするための視点を整理すると良いでしょう。たとえば、将来的に現金化が最優先であれば売却の見通しや手続を優先し、維持しつつ収益化を目指すならば賃貸や定期借地による活用を検討する、といったようにフェーズごとに道筋を描くと進めやすくなります。

まとめ

遠方の未利用地を所有していると、固定資産税が継続的な負担となり、そのまま放置すれば累積額も思った以上に大きくなります。住宅用地特例や各種軽減措置の有無によって税額も大きく異なり、管理や活用の方法によって負担の大小が変わることもしっかり理解する必要があります。将来的なリスクや、売却・賃貸による税務メリットの違いを比較し、ご自身の状況に合わせた最適な選択を模索しましょう。わからないことは専門家に相談し、行動につなげることが重要です。

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執筆者紹介

小川 浩司

代表取締役

キャリア30年

保有資格

行政書士

宅地建物取引士

賃貸不動産経営管理士公認 不動産コンサルティングマスター、他

相続対策、空き家対策、不動産終活についてのコンサルティングを得意としております。
行政書士として登録しており、権利義務や事実証明に関する書類の作成、相続手続きなどの専門性を必要とする案件にも対応しております。
ご相談の内容により、 弁護士、税理士、司法書士、土地家屋調査士、建築士等の他の専門家と連携し、お手伝いさせていただきます。いつでもお気軽にご相談いただけますと幸いです。
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