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空き家を相続した方の貸し出し注意点は?契約や税金リスクも押さえて確認

空き家相続

相続した空き家、当面は住む予定がないものの、将来的には住み替えを検討している方も多いのではないでしょうか。しかし「その間、ただ空き家にしておくのはもったいない」と感じて、賃貸として貸し出すことを考える方もいらっしゃいます。実は空き家を貸す際には、税金や契約、管理方法など多くの注意点が存在します。本記事では、空き家を貸し出す際に確認すべきポイントやリスク、準備について分かりやすく解説します。これから貸し出しを検討している方は、ぜひ参考にしてください。

貸し出す前に確認すべき法律や税制度の基礎知識

相続で取得した空き家を貸し出す前には、税制上および法律上の確認が欠かせません。まず、「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除」は、相続した家屋や敷地を売却する場合に、譲渡所得から最高三千万円を控除できる特例ですが、貸し出すと適用対象外になる可能性があります。また、この特例を受けるには、昭和五十六年五月三十一日以前の築であることや、相続開始から三年以内の譲渡など厳格な条件が定められています。こうした要件は貸し出すことで満たせなくなることがありますので、ご注意ください。

次に、「小規模宅地等の特例」では、相続した土地を宅地として利用していれば、一定の要件を満たすことで相続税評価額が最大八割減額されます。この特例も貸し出すことで適用要件から外れる場合がありますので、貸し出しの有無が税負担に与える影響を慎重に見極める必要があります。

なお、これらの特例を適用するには所定の手続きが必要です。「被相続人居住用家屋等確認書」の取得や、確定申告時の対応などが求められます。貸し出しにより当初想定された特例の適用が困難になる場合もあるため、不動産の活用方法によって税制上のメリットが変化することをよく理解しておくことが大切です。

制度名 内容 貸し出し時の影響
被相続人居住用譲渡所得特別控除 売却時に譲渡所得から最高3,000万円控除 貸し出すと特例対象外になる可能性あり
小規模宅地等の特例 評価額を最大80%減額 貸し出すことで適用要件を満たさなくなる場合あり
確定申告・確認書取得手続き 特例を受けるために必要な申告・書類取得 貸し出すと要件が変わり、手続きの再確認が必要

貸し出す前に必要な具体的な準備とコストの概要

空き家を貸し出す際には、まず建物を貸せる状態に整えるための準備が欠かせません。例えば、リフォームや清掃などの初期費用はケースによって大きく異なりますが、築年数や建物の状態によっては屋根や外壁の再塗装、内装のクリーニングを含めておよそ百万円から数百万円規模に達することもあります。ある事例では、築二〇年の実家にハウスクリーニングと外壁・屋根の再塗装を含めて一四〇万円、施工期間は約十五日だったと報告されています。

また、貸し出し後には定期的な管理・修繕、入居者対応など貸主としての責任と手間が発生します。こうした負担は時間と労力だけでなく、維持費としても現れることがあり、管理内容によっては専門業者への依頼が必要になるケースもあります。

さらに、入居者がなかなか見つからない場合は空き家のまま維持コストだけがかかるリスクもあります。例えば、空き家の所有だけでも固定資産税や都市計画税、水道・電気の基本料金、火災保険料、庭木の手入れなどを含めると、年間で数十万円以上の維持費がかかることもあります。ある試算によれば、築三十年の空き家で年間の維持費は約二十六万円という例も報告されています。

以下の表は、貸し出す前に想定される主な準備とコストの概要をまとめたものです。

準備・項目内容例概算費用
初期整備ハウスクリーニング・外壁・屋根再塗装など約140万円(築20年の例)
維持・管理入居者対応、定期修繕、管理業務業務内容により変動
空室時の維持費固定資産税・都市計画税・光熱費・保険料など年間約26万円(試算例)

契約形態と管理体制の選び方

将来的にご自身が住む可能性を視野に入れて空き家を貸し出す際には、契約形態の選定が極めて重要です。まず、普通借家契約は借主の更新請求権により長期にわたる安定した居住が期待できる反面、貸主の都合での解約が難しい点にはご注意ください。一方、定期借家契約は契約期間終了後に自動更新がないため、貸し出し期間を明確に管理でき、ご自身が戻る予定に合わせやすい契約方式としておすすめです 。

管理を外部に委託する場合、賃料査定や募集活動、契約書の作成や重要事項説明、家賃集金、設備トラブル対応といった煩雑な業務を代行してもらえる点が最大の利点です。しかし、その分管理委託料が発生しますので、費用と安心を天秤にかけて判断することが求められます 。

また、自治体が提供する「空き家バンク」を活用する方法もあります。空き家バンクは登録・掲載が無料で、自治体が運営する安心感のあるマッチング制度です。ただし、登録後の交渉や契約手続きなどはご自身で対応する必要があり、契約成立までに時間がかかる場合がある点を理解しておくことが大切です 。

選択肢特徴注意点
定期借家契約期間終了後に終了し、貸主の再利用しやすい借主には選ばれにくい場合もある
管理会社の委託業務負担の軽減が期待できる管理委託料が発生
空き家バンク活用登録・掲載が無料で安心感がある契約交渉や手続きは自己対応、成約まで時間がかかることもある

貸し出し中に気をつけたいリスクの管理ポイント

空き家を相続して貸し出している間にも、注意すべきリスクがあります。まず、固定資産税や都市計画税は貸していても所有者である貸主に課される税負担です。賃貸でも納税義務は貸主にあり、その負担を必要経費として確定申告で計上することが可能です(不動産所得の必要経費として)。

次に、トラブルに備えることが重要です。貸し出し中に設備の不具合や近隣との問題が生じた際、貸主には対応・解決責任が生じます。トラブル対応のための連絡方法や、修理体制などを事前に整えておくことで、後のトラブルを防ぎやすくなります。

さらに、貸し出し期間と自身の将来の居住計画をしっかり見比べておくことが必要です。将来自分が住む可能性があるなら、いつまで貸し出すのか、返却時期の目安や準備期間を設けてスケジュールを明確化することで、住み替えなどの混乱を防げます。

以下の表は、貸し出し中に意識すべきリスクとその対策を簡潔にまとめたものです。

リスクの内容 具体的な注意点 対策のヒント
税負担(固定資産税・都市計画税) 貸主に納税義務がある 必要経費として計上、申告の準備を
トラブル対応責任 設備不具合や近隣トラブルへの対応 連絡・修理体制を整備
将来の居住スケジュール 自分の居住計画とのズレ 返却時期を明確に設定

まとめ

空き家を相続した際に賃貸として貸し出す場合は、税制や法律、契約形態、管理の方法まで、幅広い視点が必要です。特に税の控除や特例が利用できなくなる点や、入居者対応など貸主としての責任に注意が必要です。また、賃貸期間や将来自身が住む予定も踏まえてスケジュールを明確にし、リスクも含めた計画的な管理が大切です。適切に準備と検討を重ねることで、余計なトラブルや損を避けることができます。ぜひ賢く活用しましょう。

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執筆者紹介

小川 浩司

代表取締役

キャリア30年

保有資格

行政書士

宅地建物取引士

賃貸不動産経営管理士公認 不動産コンサルティングマスター、他

相続対策、空き家対策、不動産終活についてのコンサルティングを得意としております。
行政書士として登録しており、権利義務や事実証明に関する書類の作成、相続手続きなどの専門性を必要とする案件にも対応しております。
ご相談の内容により、 弁護士、税理士、司法書士、土地家屋調査士、建築士等の他の専門家と連携し、お手伝いさせていただきます。いつでもお気軽にご相談いただけますと幸いです。
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